その後、葬儀のあれこれが終わる頃には
母とは元通りになったし、
父がいない以外はすっかりいつもの生活だった。
私が中学三年生になり、
大学生になった兄は一人暮らしを始めた。
兄とはとても仲がよかった。
家にいた頃は、怖がりの兄のお風呂や
トイレについていってあげたり、
二階に一緒にあがってあげたりしていた。
小学生の頃は、一緒におまつりにいったり
雪が降ったら庭でかまくらをつくったり
朝からゲームしたりしていた。
ケンカらしいケンカもなかったと思う。
友だちの多い兄が泊まらせた賑やかなへやの隣で、
眠りにつくのも実は嫌いじゃなかった。
父が亡くなるときも、一緒にいて同じ目線で話をできたのは兄だった。
高校生の頃、帰省した兄に、駅まで送ってもらったこと
サンタさんがこなくなった日、
一緒に確認しあったこと、
全部、ぜんぶ覚えているのに
もう声が思い出せない。
兄が死んだのは、
わたしが高校二年生のときだった。