そして、2度目の。
先の見えない仕事の山も終え、期末の納め会があった。
あれから、佐藤くんとは仕事終わりにご飯にいったりしながら、旅行の話を進めていた。この時は、まだ彼氏とは別れていなかった。
納め会は盛り上がり、案の定佐藤くんはひどく泥酔していた。
明日は仕事ということもあり、この日は終電での帰宅となった。
一緒に帰って佐藤くんを支えてくれていた男の子も、乗り換えで別れてしまい2人になる。
こんな大きい人間をどう連れて帰ったら良いのか悩んだが、なんとか自分で歩いてくれた。
ホームに上がると、すっと私の腰に腕を回してくる。
人がいた時とは違う距離感に、酔ってる割に考えたんだなと思った。
最寄駅につくと、佐藤くんは弱々しく私にすがりついてきた。
「むり、帰れない…助けて…」
ビジネスホテルにいくか、漫画喫茶に行くかを検討したが結局前回と同じ場所の同じ部屋になった。
そして、部屋に入ると前回と同様にすぐに睡眠に入る佐藤くん。
前回と違い、翌朝帰宅し、整え、仕事に行かねばならないのできちんと起きれるよう祈りながら私も転がり目を閉じた。
眼が覚めると、案の定隣にいる佐藤くん。
時刻はもう朝と呼ばれる時間だ。
「どう、大丈夫?」
「んー…頭痛い」
言いながら、私のシャツのボタンを一つずつ外してゆく。
「今日、仕事だよ」
「んー…」
全て外し終え、さらりとぬがし、肌に触れる大きくて分厚い掌。
酒の抜けない、酔っ払いの体温が伝わる。
「ねえ、こうされるの、好きなんでしょ」
色んなところをいじくり回されて、トロンとしている私に意地悪な顔で佐藤くんは聞いてきた。
そんなんじゃない。
必死に声を抑えながら、ぶんぶんと首を振り否定する。
「うそつき。旅行だって、こうなるの期待してたんじゃないの?」
「し、してない…」
「じゃあしないの」
「知らないよ、いじわる」
佐藤くんは、私の恥ずかしそうな顔を見てとても満足そうにしていた。
本当に、イタズラっこの子どもみたいな顔をする。
「ねえ、ぎゅってして」
前回もそうだったが、佐藤くんは愛を感じながらしたいんだそうで。そういった要求をしてくる。
言われるまま、抱きつく。でも、大きすぎていくら強くしても、掴めている気がしなかった。
「好きって言って」
「…すき」
「誰を?」
「佐藤くん」
「名前で、ちゃんと言って。もう一回」
「ゆうやくん、好き」
「…なんで言ってくれるんだろうね」
そう言って佐藤くんは、今度はゆるやかに、優しく微笑んだ。
終わったあと、どのくらいの距離にいればいいのかわからない私に、佐藤くんはそっま引き寄せキスをする。
もっと甘えてよ。
って、言われても私は、こんなことをして起きながらも、どうしていいかわからずにいた。
終わると途端にスイッチが切れたかんじで、いつもの関係との境がどこなのかわからなくなってしまう。
そんな私を腕の中にすっぽりとおさめ、彼は楽しそうに
「こういうのしてみたかったんだよね」
と言った。
ちなみに、こういうのとは当たり前だが行為自体を指すものではない。
彼氏がいて、しかも職場の同僚である私とすることに対しての発言である。
もしも私がもう少し道徳的な人間だったら、彼氏に負い目を感じていただろうか。
それ以前に、不埒な関係をきちんと断って、こんな風にはならなかったのだろうか。
もっと恋愛に染まれるタイプだったら、佐藤くんの行動を勘違いできて、彼氏から乗り換えるような選択をしていたのだろうか。
それとも、もっと上手に割り切って遊んでいたのだろうか。
分からないけれど、私は結果としてどれもできなかったし、何が正しかったのかも分からない。
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